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長野県南牧村 滝沢牧場の大将

初開催を除き、2011年から毎年レースの撮影に赴いている野辺山高原。毎度、滞在時は慌ただしく動いているので会場の滝沢牧場でゆっくりとした時間を過ごす事もなく10年が経過した。

今年は開催前日の”早めに”現地入りをして、準備の空気を感じてみようという事で珍しく高速を使用して滝沢牧場に到着。

今回の野辺山メインメニューは、これまでどの人かも知らなかった大将だ。


金曜日、滝沢牧場には馬が走り、普段の観光牧場の時間が流れる。ソフトクリームを初めて食べ、忙しくスタッフが準備をしている中、「大将は?」と聞いて廻り、ようやく滝沢牧場の大将に会う事ができた。
昼過ぎに取材のアポイントをとって、これまた初めてのカレーを食堂で食べる。しばらくすると、大将をはじめ商工会陣が昼食に入ってきた。



野辺山シクロクロス。

日本のシクロクロスシーンの始まりである長野県で行われるシクロクロスミーティングの中でも異色であり、国内でも有数の人気レースイベント。始まりは、Raphaジャパンの矢野さんが滝沢牧場に訪れた時からという事だ。

「面白そうだな、じゃやろう」。おそらく矢野さんはこの時点でバイキンの映像など大将に見せていなかっただろう。「シクロなんて何がなんだかわかんなかった」と語りながら、未知のスポーツイベントを開催。その後、UCIレースや全日本選手権を開催した経緯を話してくれた。

「よその会場も行ったけぇど、寒い中お店は無いし自動販売機も一個も無い。広い公園でやってるもんだから、トイレ行くにも遠いし。」

 初めて観たシクロクロスは、つまんないイベントに見えたらしい。やってる人だけ燃えていて、なんだこりゃ?なイベントに見えたのだ。語り口の向こうに、寒々としただだっ広い公園で行われるシクロクロスのシーンが浮かんできて、思わずマスクの下で微笑みながら聞いていた。

「ここは観光牧場。家族で来ても遊べるし、飲食もトイレもある。他のシクロクロスはレースの人だけだけど、応援する人、家族も来られるのが違うところ。狭いけど。」

確かに、撮影時に走り回る際にも、観客の合間をすり抜け、かき分けていく感が高いのが野辺山だ。キャットアイ時代からのカウベル好きな矢野さんが作り始めたRaphaのカウベルのおかげで、他の会場と比較しても賑やかな雰囲気はとびぬけている。

レース以外の人が楽しめるのが野辺山のいいところ

「シクロなんて何だか全然知らなかった」


「グラベルなんてのも知らなかったけど、矢野さんがこれからはグラベルだ、って言うから、じゃそれやろうって」。

だいたい林道の事を「グラベル」なんて言わないから、これまた何がなんだかわからなかっただろう。2年間、開催はできなかったが野辺山グラベルチャレンジも南牧村野辺山高原のサイクリングイベントとして定着していくだろう。「みんながみんな同じ温度感ではない。でも巻き込んでやっていっている」と南牧村商工会のメンバーを巻き込んで、シクロクロスに限らずサイクリングイベントの広がりを見せている。

「グラベル?も知らなかった」


数々のドラマを生んだ2017年シクロクロス全日本選手権。新しいチャンピオンに沸いた冬の滝沢牧場だったが、大将によると「あれはもうやらない」。
費用面で継続できるものではなく、野辺山シクロクロスで訪れていた観客、応援、家族といった部分も少なかった。寒さの中に、どこか暖かい空気の心に残る大会ではあり、また全日本選手権をと思うのは外野で、それだけではできないのが会場、運営の立場だろう。



まずロケーションね。八ヶ岳ね。

滝沢牧場の食堂から見える景色を見ながら、大将は野辺山シクロクロスの魅力についてロケーションを第一に掲げた。この食堂の窓は、これでもかと言わんばかりの大きなガラスが張られ、八ヶ岳を見ながらのBBQを堪能する事ができる。かつては富士山とも争ったという伝承もある八ヶ岳。その八ヶ岳をバックに、泥まみれになって走る姿は観客、参加者の誰にとっても思い出に残る時間だろう。

2年ぶりの開催が終わり、帰路の中央道に乗った。既に来年もまた大将に会うのが楽しみになりながら。